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eBay や AliExpress などの海外通販サイトで見かける、中国製エアバンドラジオの組み立てキット。

組み立て、調整には電子工作の経験が必要ですが、安価な割にはそこそこの性能を発揮してくれます。

eBay AliExpress などで販売されているこのキット、今までに5種類のバージョンが確認されています。

 

このタイプは 2007年頃から販売されている、息の長い製品です。

時々、パーツの定数変更がなされるものの基本的な構成は変わらず、後のバージョンでも使われる基本回路となっています。

2015年現在でも販売されており、送料込みでも 2,000円程度で購入できます。

上の基本バージョンですが、一時期、某海外掲示板で 「バンドパスフィルターに同調ズレがあるのではないか?」 という話題で盛り上がったことがありました。

その対応策として登場したのがこのバージョン。

同調部のセラミックコンデンサをトリマーコンデンサに交換して出荷されていましたが、可変インダクタを用いた新バージョンが登場したことにより姿を消しました。

このバージョンでは、前バージョンまではプリントパターンで構成されていた B.P.F 回路のインダクタが、空芯コイルの実装に変更されました。

また、受信周波数帯の調整用に、可変インダクタが追加されています。

上のバージョンの AF 出力部にレジスタを追加したものもあります。

製造元も、けっこう頻繁に手を加えているようです。

 

2号機はこのバージョンを使って製作しました。

2015年10月の時点で確認できる最新バージョンがこれ。

B.P.F 回路のインダクタがプリントパターンに戻っています。

インピーダンス補正用のコンデンサの配置も微妙に変わっています。

ラジオキット購入

ネットで注文すると、3週間ほどで、このようなプチプチ封筒に入って届きます。 書留ではなく普通郵便。 いつの間にかポストに入っていました。

裏面には品名として "Module" と記載されています。

通関時に開封された形跡はありませんでした。

 

マウスを重ねると画像が変わります.

中身は、このようにパーツがドサっと入っています。
部品調達

ラジオキットのほかにもケースや電源、スピーカーなどの細々したパーツも準備しました。

東京・秋葉原であれば秋月電子通商千石電商マルツパーツ館などを周れば手に入ります。

これらの店舗は通信販売も行っているので、利用するのも一手です。

電子工作の定番、タカチのアルミケース。

1号機と同じく YM-180 を用意しました。

サイズは幅 180mm、高さ 40mm、奥行き 130mm

加工がしやすく、そこそこ綺麗に仕上がるケースです。

SANJIAN STUDIO という中国の企業が製造している PLJ-0802 周波数表示ユニット。 これも eBay や AliExpress から購入できます。

パッケージには、取扱説明書をネットからダウンロードするよう指示がありますが、肝心の URL が書かれていません。(苦笑)

探したら見つかりましたが、やはり中国語。。。

※ 2017年1月現在、海外のユーザーが作成してくれた英語併記バージョンが公開されています。

この手の電子ディバイスは日々価格が下がっていますが、ある日を境に突然市場から姿を消すことが多いので、将来的に使えそうな物はストックするようにしています。

AC 100V を DC 12V に変換するための AC アダプター

現在主流のスイッチング アダプターが安価で種類も豊富ですが、その構造上、ラインにノイズが乗ることがあります。

パネル取り付け用のコネクター(メス)も用意します。

DC-DC レギュレータ。

AC アダプターから入ってきた DC 12V を2系統に分配します。

さらに、1系統は電圧調整(降圧)が可能なユニットです。

ラジオユニットへは DC 12V、周波数表示ユニットへは DC 9V へ降圧して供給します。

電子工作マニア御用達のショップ、 aitendo のオリジナル基板です。

上の写真の DC-DC レギュレータですが、出力側にわずかに交流成分が含まれています。

実用上は全く支障ありませんが、気持ち悪いので整流ダイオードを直列に挿入しておきます。

8Ω/0.3W の小型スピーカー。 直径 66mm。

ジャンク屋で100円程度で手に入ります。

右の金具はスピーカーを固定する爪。

可変抵抗器(ボリューム)のツマミです。

価格はデザインや材質によってピンキリ。

外観に影響するので、センスを問われるパーツです。(笑)

同調、音量、スケルチ用に3個用意します。

同調用ボリューム。

エアバンド の周波数は 118.000MHz から 136.975MHz.で、帯域幅は 19MHz あります。

このキットにも同梱されている一般的な同調用の可変抵抗器(左)の回転角度は300° ですが、この角度内で狙った周波数に合わせるには、かなり微妙な操作が必要です。

右のタイプのものは10回転(= 3600°)かけて定格値まで変化するので、より細かな操作が可能です。

パネル取付用の電源スイッチ。

同じサイズでキャプションの違うものをいくつか用意しました。

これも外観に影響するパーツです。

どれを使うかは、あるていど組み上げてから全体の雰囲気をみて決めようと思います。

アンテナ入力 RF コネクター。

今回はパネル取付用の BNC タイプを使います。

VHF 帯であれば M タイプでも構いません。

BNC タイプと M タイプの両方を付ける場合は、分配回路を入れて整合をとる必要があります。

それぞの特性についてはこちらを参考に。

配線に使う線材類。 1.0〜1.5mmΦ 程度の撚り線が使いやすいでしょう。

色分けには一定のルールがありますが、個人用途であれば好みでどうぞ。

灰色のものは RF 用の 50Ω 同軸線ですが、なくても構いません。

この他、熱収縮チューブ、結束バンドなどを使うと綺麗に仕上がります。

スペーサー。

基板をケースに固定する際、持ち上げるために使います。

色々な材質のものがありますが、これは一番安価なジュラコン製。

金属製のものはグランドがループになる可能性があるので使わないようにしています。

3mm ネジ用で長さ 15mm のものを用意しました。

ユニバーサル基板。

ジャンクパーツで構いません。

スピーカーの穴を空ける際のガイドとして使います。

ラジオキット組み立て

キットの中身は PCB(プリント基板)×1枚と、パーツ類の入った小袋が2つ。

組立説明書は A4 の紙が 4 枚、中国語と英語で書かれてあります。

中国語だけだった前バージョンから進歩しています。(笑)

またネットには、海外のユーザーが作成してくれた英語バージョンが公開されています。

セミコンダクタ類は制電スチロールで保護されています。

いちおう気を使っているようです。

組み立てに先立って、すべてのパーツが揃っているかパーツリストと照合しますが、たいては余分に入っていることが多いです。

ですが、万が一不足していた場合、販売元にクレームをつけても、相手が相手なだけに送ってくるかどうか疑問です。

自分で不足部品を調達できる人なら何とかなりますが、そうでない場合は諦めるしかないでしょう。

海外通販の場合、こういうリスクは付きものです。

抵抗は、このように分けておくと作業がはかどります。

カラーコードは覚えてしまえば楽ですが、カラーから抵抗値を求めるツールもネットにたくさん公開されています。

33KΩ ■■■ (燈燈燈 金)と 3.3KΩ ■■ (燈燈赤 金)は間違いやすいので注意です。

ハンダには電子工作用、模型工作用、精密基板用など色々な種類がありますが、主にハンダ線の太さと、スズ/鉛 の比率の違いだけで、どれを使っても大差ありません。

ハンダごては 20W 〜 30W 程度の、こて先の細いものが使いやすいです。

パーツリストにある番号と基板にプリントされた番号を照合しながら、背の低いパーツから取り付けていきます。

まずは IC ソケットとセラミックコンデンサから。

続いて抵抗と電界コンデンサ。

電界コンデンサにはプラス・マイナスの極性があるので要注意。

足の長いほうがプラス、白いラインが入っているほうがマイナスです。

抵抗は、足の片方を精密ドライバーなどでアールを付けておくと、取り付けた時の高さが揃い、見栄えも良くなります。
トランジスタやダイオードなどの半導体は熱に弱いので、最後に取り付けます。

IC をソケットにはめ込む際は、無理に押し込むと足が折れてしまうことがあるので、注意が必要です。

 

可変抵抗器×3個、AF 出力ジャック、RF 入力コネクター、DC 入力コネクターはケースに取り付けるので、ここでは省いておきます。

パーツの取り付けに際しては特に難しい個所はありませんが、唯一、セラミックフィルターの取り付けの向きには注意が必要です。

セラミックフィルターは写真のように3本足の茶色いパーツで、表面に "L10.7S" と印字され、赤い印が付いています。

組立説明書では "Y1" というパーツ番号です。

このパーツの足の配置は、印字面 (印字が見えにくい場合は赤い印がある面) をおもてにして、右から 1、2、3 番となっています。

右上の赤い印はパーツのおもて面を表す印で、ピンの配置を示すものではありません。

回路図を確認すると、

 1番ピン : NE612 の OUTA (4番ピン)
 2番ピン : GND
 3番ピン : 2SC3355 のベース

につながっています。

したがって、基板上では写真のように対応します。

なので、このように印字面が IC ソケットの方に向くように取り付ければ OK です。

組立説明書にもこの部品の取り付けには注意するよう書いてありますが、ちょっと分かり難いです。

改造 (コイルの巻き直し)
このバージョンでは、バンドパスフィルターのパーツ番号 L1、L3、L5(2Tインダクタ)、L2、L4(15Tインダクタ)、C3、C4(トリマーコンデンサ)および C7、C8、C9(セラミックコンデンサ)は、すでにハンダ付けされていました。

ただし、回路図では 82pF となっている C7、C8、C9 には 56pF が、3pF となっている C3、C4 には容量不明のトリマーコンデンサが付いています。

また 15T 指定の L2、L4 は、20T あります。(T:Turn 巻き数)

この取付済のパーツ、エアバンド周波数に調整してあるのかと思いきや、そうでもないようです。

なぜ回路図と異なる部品が付いているのかは不明ですが、このため高い周波数(概ね130MHzより上)での S/N 比が良くありません。

S/N 比を改善するため、L2、L4 を回路図どおりの定数に変更します。

0.7mmΦのポリウレタン線(エナメル線)を使って、 15T のインダクタ (空芯コイル) を作ります。

もともと付いているインダクタは 0.5mmΦ/20T ですが、0.7mmΦで巻くことにより全長がほぼ同じになるので (0.5×20 ≒ 0.7×15)、基板にぴったり収まります。

ポリウレタン線がない場合は、もともと付いていたインダクタを解いて使っても構いません。

適当な長さに切ったポリウレタン線を、4ミリのドリルの刃に15回密巻きします。

巻きの向きに注意です。

上 : もともと付いていた 20T インダクタ。

下: 巻き直した 15T インダクタ。

 

これを交換するだけで、高い周波数での S/N 比が劇的に改善されます。

さらに、回路図どおり C3、C4 を 3pF に、C7、C8、C9 を 82pF のセラミックコンデンサーに交換しました。
ラジオキットの組み立て終了!

このあと動作確認、調整を行ないます。

抵抗とセラミックコンデンサは余分に入っていることが多く、このくらい余るのは普通です。
動作確認 & 調整

組み立てが終わったら、配線ミスが無いかチェックし、周辺パーツを仮付けして受信できることを確認します。

電源投入直後は若干の周波数変動がありますが、2〜3分すると安定してきます。

受信を確認できたら、次に PLJ-0802(周波数表示ユニット)を接続して受信周波数を表示させます。

受信周波数の情報は、ミキサー IC NE612(ロットによっては NE602 が入っている場合があります) の局部発振周波数から取り出します。

NE612 のデータシートを見ると 7 番ピンが OSC(局部発振)出力、3 番ピンが GND になっています。

なので 7 番ピンの信号を PLJ-0802 へ入力すれば、局部発振周波数が表示されるはずです。

PLJ-0802 はオフセット調整ができるので、局部発振周波数に中間周波数を補正して、受信周波数を表示させることが可能です。

 

裏面には設定ボタンが2つ付いています。

@ のボタンでオフセット量の設定、A のボタンで少数点以下の表示ケタ数の設定を行ないます。

ほかに電源(DC 9V 〜 DC 12V)および信号入力のコネクタがあり、リード線も附属しています。

受信周波数を表示させるには、まず、OFFSET 設定を選択して 10.7MHz オフセットさせます。
次に、

受信周波数 = 局部発振(OSC)周波数 - 中間(IF)周波数

なので、マイナスシフトに設定。

 

これで設定は完了です。 設定値は電源を切っても保持されます。

OSC 信号を入れると、このように受信周波数が表示されます。

表示は、小数点以下3ケタ表示と4ケタ表示に切り替えができます。

このユニットの感度はかなり良く、4ケタ表示にすると4ケタ目がチラチラと変動して目障りなので、3ケタ表示にしています。

受信帯域はこの緑色のインダクタ(パーツ番号 L1)で調整します。

中央のネジを回して押し入れると高い周波数に、引き出すと低い周波数にシフトします。

同調用のボリュームを反時計回り一杯に回した状態で 118.000 が表示されるように調整します。

この後、基板をアルミケースに収めると多少変動するので、この段階ではラフな調整で構いません。

ケース加工

タカチの汎用アルミケース。 YM-180

価格も手頃(実売 900円前後)で、電子工作マニアの間では定番のケースです。

サイドの4個所のネジをはずすと、上下がコの字に分かれます。

表面にはキズ防止のためのビニールが貼られています。

ゴム足も附属しており、加工後、四隅に両面テープで貼り付けます。

方眼紙にケースの大きさを写し、パーツのレイアウトを考えています。

CAD を使えばスマートなのでしょうが、このくらいの部品数であれば紙でも十分です。

フロントパネルのレイアウトも紙の上で検討。

狭い面積にパーツが集中するので、パーツどうしが干渉しないか確認します。

参考までに、パネル寸法図はこちらです。

位置が決まったら鉛筆で罫書き。

保護ビニールが付いたままだと刃物が滑ることがあるので、作業する面のビニールは剥がし、直接罫書いています。

キズが付きやすい縁辺部は、マスキングテープで養生しておきます。

ドリルで適当な穴を空けた後、ヤスリやリーマーを使って徐々に形を作っていきます。
ケースに綺麗な穴を空けるコツは、一度にたくさん削らないこと。

現物を合わせながら、時間をかけてゆっくり作業するようにしています。

急ぐと削り過ぎたりキズを付けたり、ロクなことがありません。

スピーカーの穴は、ユニバーサル基板の穴を利用すると等間隔に空けることができます。

基板にスピーカーの大きさを書き写し、どの範囲を空けるか検討します。

ケースに基板を合わせ、対角の2個所を慎重に空けたらそこをビス止めし、基板がズレないよう固定しておきます。

あとはドリルを使ってチマチマと穴を開けていきます。

電動ドリルを使ったほうが楽ですが、こういう加工にはハンドドリルのほうが精度が出ます。

このケースに使われているアルミニウムは粘度が高いので、ドリルが貫通する側にはバリが出ます。

なので、おもて面から空けたほうが綺麗に仕上がります。

 

バリは、ひと回り大きいドリルの刃を使って面取りすればキレイに取れます。
穴の大きさは好みですが、2〜3ミリ程度が適当でしょう。

あまり小さいと音がこもって聞きづらくなります。

背面にはアンテナ入力、外部スピーカージャック、AC アダプタージャックの穴も空けました。

ラジオユニットと電源ユニットを固定する穴も空けたら、ケースの加工は終了です。

パーツ類を仮付けし、干渉が無いかこの時点で確認しておきます。

プラバンの端切れを使って、周波数表示ユニットの飾り窓を製作。

整形後はプライマー処理をし、プラモデル用の半光沢の黒色で塗装しました。
組み立て、配線
PLJ-0802 は合成ゴム系の接着剤 (G17) で接着しました。

モノが軽いので、接着剤で十分です。

ヘッドフォンジャックと外部スピーカージャックは、ユニバーサル基板の切れ端で作ったスペーサーを挟み、瞬間接着剤で接着します。

こうすることでパネルとツライチになり、また、ナットを使わないのでスッキリして見えます。

 

マウスを重ねると画像が変わります.

可変抵抗器の配線処理。

ハンダ付け後、熱伸縮チューブで覆い、結束バンドでまとめて撚っておきます。

アンテナコネクタから RF 入力部までは 50Ω の同軸を使いましたが、この程度の長さであれば単線を使っても受信には影響ありません。
スペースの関係で、DC-DC レギュレータは壁面に取り付けています。 
内部の配線を終了。

フタをしてしまえば見えなくなる部分ですが、見た目のスマートさにも拘っています。

デカールはテプラで作成。

6mm 幅の黒色テープを使いました。

四隅に附属のゴム足を取り付ます。
デカールを貼って、完成!

感度や安定度は1号機と大差ありませんが、バックライト付き液晶表示と、小数点以下3ケタ表示は便利です。

正常動作を確認したら、再度 L1 を調整して受信帯域を設定します。

 

マウスを重ねると画像が変わります.

バックライト付きの液晶パネルは視認性抜群!

薄緑色が綺麗です。

余談ですが。。。

半自作エアバンドラジオ 1号機、2号機を製作するにあたり、実験や改造を繰り返すうちに、いつの間にか計5セットも購入していました。(苦笑)

最初の1台は Aliexpress から、あとの4台は eBay から購入。

パーツ不足が1セットありましたが、不達などのトラブルはありませんでした。

最近になって、新型基板の販売が始まった模様です。

(2017/09/12 追記)

 

マウスを重ねると画像が変わります.

 

最新バージョンには、同調方式に PLL シンセサイザーを採用しており、安定度も向上しているものと思われます。

受信周波数を4桁の7セグメント LED で表示するようになっています。

この製品には受信方式の違いにより Model R60(シングルスーパーヘテロダイン)とModel R80(ダブルスーパーヘテロダイン)の2種類があります。

メーカーより取扱説明書(R60R80)が公開されています。 

また、海外在住のアマチュア無線家 ZL2PD氏が作成してくれた R80 の英語バージョンが公開されています。

 

マウスを重ねると画像が変わります.

この製品も組み立てキットですが、表面部品はすでに実装されているので、難易度は高くなさそうです。

この製品にはいくつかのバージョンが存在し、最新版は Version 6 です。

 

マウスを重ねると画像が変わります.

最近になって Model R80 の拡張版 (Version 7) の販売が始まりました。

エアバンドに加え FM 放送も受信できるようになっています。

ただし、FM 放送はヨーロッパ仕様(88 MHz 〜108 MHz)のため、日本の放送局の一部は受信できません。

ネットには、海外在住のアマチュア無線家 ZL2PD氏が作成してくれた取扱説明書(英語バージョン)が公開されています。

 

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